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事務局からの連絡

保険医療部

混合診療解禁に関する国立大学の動き

11月22日の日経新聞の朝刊に、東大、京大、大阪大の三大学病院が21日に「保険診療と自由(保険外)診療を併用して患者の費用負担を軽減する「混合診療」を検討課題に挙げ、導入論に一定の理解を示す要望書を政府の規制改革・民間開放推進会議の宮内議長をはじめ、村上行革担当相、竹中経済財政担当相に提出すると報道された。
 また、メディファックスによると、3病院長は「特定療養費制度が一部適用されているが、適用までに時間を要し、保険適用されても制約が多く必ずしもすべての費用がまかなわれるわけではない。先端・高次医療を維持するためには、健康保険制度と自己負担を組み合わせた制度設計が必要であり、特定療養費制度の抜本的改革を含む規制改革を要望する」としている。いずれにしても、先端医療を推進して行くためには、大学病院の経営的側面から、患者負担増もやむなしとの意向が強く、皆保険制度を否定するような混合診療解禁を求めたものではないようであるが、日医、厚労省が「混合診療解禁」は、国民皆保険制度の崩壊に結びつくものとして各地で国民皆保険制度を守るために集会を行い、署名活動をしているさなかにこのような行動に出られたこと、東大、京大は日本病院協会に所属していること、京大は府医の会員でもあり地区医師会を構成していることなどから放置できることではないために、早速、府医の森副会長と日病の武田副会長が京大病院の田中院長に抗議の電話を入れた。あいにくの出張中ということで24日に電話にて抗議を行った。要望書の詳細については田中病院長からは証されなかったが、「独立行政法人化されたことと、今後5年間で補助金が削減されることから大学における高度先進医療が行えなくなるという危機感からの要望であり、大学の窮状を憂えての行動」という説明があった。
 府医からは、内閣府のいう「混合診療」は、すでに、多くのところでも訴えているように、日本の世界に誇るべき皆保険制度、フリーアクセスを根底から崩壊させるものであり日本医師会を始め、全国の都道府県医師会でも「混合診療」解禁に反対する国民運動を展開し署名活動を行い衆参両議会に提出の予定であること、京都大学も京都府医師会に所属する地区医師会であることなどから我々の活動を十分理解して同調していただく必要があることなどを申し上げ抗議を行った。
 また、これに先駆けて、内保連、外保連からも、混合診療についての見解が示されているが、内保連見解の結語「 混合診療は現物給付を骨格とするわが国の皆保険制度とは相容れないとされており、その導入は長期的に見れば国民の医療費負担増大に拍車をかけることも憂慮される。これらの点を総合すると、医療の安全性と平等性に重大な疑義がある混合診療を、敢えて導入することの必然性、妥当性あるいは正当性は医療の実態に照らして現時点では認められないと結論される。」に見られるように基本的には、混合診療は認められないという見解である。
 また、12月4日の日本医療経営学会の講演で、保険局の麦谷課長は、三大学の要望書について、「出すところを間違っている」と述べるとともに、「大学病院の逼迫した状況に驚くとともに、点数そのものは期制ではなく、ただの値段と指摘、院長らの発想を「甘い」と切り捨てているが、まさに、今回の要望書の提出により、大学病院関係者の、医療の現状、医療制度のあり方、病院経営についての認識が医学の知識ほどには理解されていないことが明らかになった。今年初めの京大との地区懇談会でも、同様に指摘を行っておいたが十分に理解されていなかったことが明らかになった。また、今年8月の日医の臨時代議員会でも、府医の上原副会長が代表質問で指摘した通り大学の勤務医との意思疎通や医療制度に対する理解を得るような努力が必要であったと思われる。今回の規制改革会議の動きは、我々と大学関係者との認識の違いを上手く利用された結果といえよう。
 ただ、今回の内保連、外保連の一連の動きと大学病院関係者の危機感を勘案し、日医では、社会保険診療報酬検討委員会の委員に内保連・外保連から各一名の委員が追加委嘱されるとともに、大学における医療のあり方などの検討を勧めるために大学小委員会が設置されることになったことは、日医・国立大学病院にとって大きな前進と考えられるし、今後の対応に強い意気込みが感じられる。
 今回はからずも、大学病院、特に独立行政法人化した元国立大学における高度先進医療に対する将来への強い不安感が当事者である病院長から提出された。このことは、日本の医療制度について日常的に議論してきた我々にとっても、今後の大きな課題との認識が必要である。現在医療費削減のみを目的として、規制改革・民間開放推進会議が日本の医療のあり方について議論しているが、日本の医療が、世界に負けない高度先進医療を開発・実践してゆくためには、大学における医療のあり方を、単純な「混合診療解禁」という経済的手法によって医療費財源を求めるというレベルの低い議論ではなく、より高い目的意識を持った、先進医療への取り組みが可能なシステムと費用の投入が可能な医療制度の策定を進める方向で議論がなされるべきであろう。 日医に設置されるという大学小委員会において、日本の医療の牽引車としての大学病院における医療のあり方が検討されることを望んでやまない。
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