京都府における支援体制
不幸にして医療事故が発生した際に、医療機関が対応すべき事項は下図のとおりです。特に、今回の制度においては、院内医療事故調査委員会の進め方、調査結果報告書の作成についての重要性が大きくなっています。特に、中立性、公平性の担保という観点からも、外部からの支援を受けることが求められています。そこで、協議会では、医療機関からの要請に対して、以下の支援を行うこととしています。支援要請にあたっては、まず、協議会の相談窓口までお電話にてご相談ください。
医療事故調査の流れの中で、医療機関が対応すべき事項は以下のとおりです。
相談窓口
協議会では医療事故調査制度に関する相談窓口を以下のとおり開設しました。
窓口:京都府医師会 医療安全課
専用ダイヤル:075-354-6355
専用メール:jikocho@kyoto.med.or.jp
対応日時:平 日 9:30〜18:00
土曜日 9:30〜12:00
※休日・夜間は医療事故調査・支援センターをご利用ください。
相談内容:①制度概要に関する相談
②事故判断への相談
③院内事故調査への技術的支援
(1)外部委員の派遣
(2)報告書作成支援等
(3)解剖・Ai実施支援 等
院内事故調査の準備
院内事故調査を円滑に行うにあたって、まずは「情報の収集と整理」を行い、現状を十分に把握しておくことが大切です。調査の開始に先立って、院内で十分に準備を進めておいてください。詳細については「初期対応マニュアル」をご確認ください。
- 1.情報収集
- ①診察記録等の保存
- ②関係者からのヒアリング
- ③病理解剖・Ai等の医学的情報
- 2.情報整理
収集した情報を時系列に整理し、丁寧に臨床経過をまとめてください。
医療法「法律」「省令」「通知」をもとに作成した「医療機関における初期対応チェックリスト」です。
医療機関における初期対応マニュアル<第2版>
外部調査委員の派遣
協議会では院内での医療事故調査委員会への支援として、外部調査委員(専門医会ならびに医療関係団体から推薦を受けた専門医等)の派遣を行います。医療事故調査に必要な外部調査委員をお探しの場合はご相談ください。
解剖・死亡時画像診断(Ai)実施の支援
協議会では院内での医療事故調査委員会への支援として、解剖・Ai実施に関する支援を行います。解剖・Aiが必要なケースで、自院では実施できない医療機関におかれましては、ご相談ください。受入施設の確保、ご遺体の保管・搬送に関する相談にも応じます。
なお、医療事故の原因究明のために、ご遺族にはできるだけ解剖・Aiの実施を勧めてください。なお、解剖には遺族の「同意」が絶対条件となっています。
以下は解剖・Aiへの同意に関するモデル様式です。
なお、死亡時画像診断の実施にかかる支援にあたっては、事前に京都府医師会に電話にて連絡をしたうえで、以下の依頼書にて京都府医師会まで支援要請を行ってください。
解剖の実施にあたっては遺族へ以下のことを必ず説明してください。
- ①病理解剖の結果、診断結果が判明するまで数ケ月かかること
- ②病理解剖の実施施設、開始時間と所要時間(搬送、準備時間も含めて数時間程度)
- ③ご遺体は病理解剖終了後、直ちにご遺族のもとに戻ること
- ④病理解剖、死亡時画像診断については、得られる情報に限界があること
遺族から解剖の承諾が得られない場合も多いと想定されますが、その際は、必ず死亡時画像診断の実施を勧めてください。なお、病理解剖を勧めたが拒否されたことをカルテに記載してください。可能であれば「念書」をとりカルテとともに保存しておくとよいでしょう。
報告書作成の支援
協議会では院内での医療事故調査委員会への支援として、報告書の作成支援を行います。報告書の作成にあたっては、留意すべき事項が多くありますので、適切な報告書の作成に努めてください。
<報告書作成にかかる留意事項>
- 1.通知では「本制度の目的は医療安全の確保であり,個人の責任を追及するためのものでないことを,報告書冒頭に記載する」と示されています。調査報告書の位置づけ・目的の記載については、まずは、以下の一文を冒頭に入れてください。
- <報告書の冒頭に記載する例文>
- この事故調査委員会は,〇〇の事例について,公正な立場で臨床経過の把握と死因の究明,同種事例の再発防止策を検討するために設置された。この報告書は,本委員会による調査結果を取りまとめたものである。また,本報告書は,病院長への報告,遺族への説明,ならびに医療事故調査・支援センターへの報告に用いるものであり,個人の責任を追及するためのものではない。
- 2.法的観点からではなく、医学的観点からの視点をもって検証します。特に、診療行為時点の医療水準や労働環境、施設整備環境等も考慮することが大切です。
- 3.事後的な評価にならないよう留意してください。特に、「~すべきだった」との記載は注意が必要で、その選択肢が唯一であったと解釈されかねません。当然のごとく、標準的治療法には幅があるため、特殊例を除いては標準的対処法が唯一であったと解されかねない記載は避けるべきです。
- 4.「相当程度の可能性」「なんらかの錯誤」「予見可能性」「結果回避義務」「過失であった」等の法律用語の使用は避けましょう。
- 5.外部委員の氏名公表に関しては慎重な対応を要します。公表する場合には事前に外部委員の了解をとる必要があります。
遺族への説明
管理者の責務として「ご遺族への説明」についても重点がおかれています。ご遺族には丁寧に、わかりやすく説明すること大切です。
遺族への説明に関する留意事項は以下のとおりです。
1.支援センターへの事故報告の届出前
- ①遺族にはセンターへの報告事項を、わかりやすく説明してください。
- ②ますは制度の概要とセンターへ報告することをしっかり説明してください。
- ③医療事故の状況は、現時点で把握している範囲での説明となりますが、調査により変わることが前提であることを十分に説明してください。
- ④解剖・死亡時画像診断については、事故調査において重要な情報となりますので、できるだけ実施を勧めてください。また、遺族に対しては丁寧な説明に努めてください。
2.支援センター調査結果の報告前
- ①説明方法については、遺族の希望する方法(口頭、書面、又は両者)で説明するように努めなければなりません。
- ②遺族には「報告」するのではなく、報告書に基づきわかりやすく「説明」をします。専門用語も噛み砕いた形でわかりやすく説明し、必要があれば説明の書面や資料を使って説明することも必要です。
- ③当該医療従事者は必ず匿名化してください。
- MEMO「遺族の範囲」
- 法律・省令で定められた「遺族の範囲」は以下のとおりです。
- ①死亡した者の遺族
- ②死産した胎児の父母・祖父母