◆麻しん発生に伴う医療機関での麻しん対応の徹底について
先般から京都府南部地域の麻しん発生について注意喚起しているところですが、下記のとおり、麻しんの発生が継続している旨、京都府より情報提供がありましたのでお知らせします。
各医療機関におかれましては、発熱、カタル症状等麻しんを疑う患者の早期診断及び最寄りの保健所への届出をいただきますようお願いいたします。
また、別添の「医療機関での麻しん対応ガイドライン(要旨)」を参照いただき、院内感染対策について院内周知の上、徹底いただきますようお願いいたします。
●京都府における麻しん届出状況
H25年12月~ 4人(5歳~39歳)
H26年1月~1月24日 16人(5ヵ月~30歳)
※20名中、1回接種:2名、不明:3名、ワクチン接種歴なし:15名
参考資料(国立感染症研究所)
●医師による麻しん届出ガイドライン
●医療機関での麻しん対応ガイドライン(第四版)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/guidelines.html
※「要旨」については別掲をご参照ください。
※「各論」は上記ホームページ等でご確認ください。
医療機関での麻疹対応ガイドライン(第四版)
平成25 年3 月8 日
国立感染症研究所感染症情報センター
本ガイドラインでの「職員」とは、事務職、医療職にかかわらず、当該医療機関を受診する外来および入院患者と接触する可能性のある常勤、非常勤、派遣、アルバイト等のすべての職種を含むものとする。
本ガイドラインでの「実習生」とは、当該医療機関を受診する外来および入院患者と接触する可能性のある学生、実習生および指導教官とする。
麻疹は空気感染するウイルス感染症で、感染力が強い(基本再生産数(R0)=12~18)ことから、本ガイドラインでの「接触者・曝露者」とは、個室管理体制にない麻疹患者が発症(発熱、カタル症状、発疹のいずれか)した日の前日から解熱後3 日を経過するまでの間に、同じ病棟、同じ階又は空調を共有する場所にいたすべてのものとする。
本ガイドラインでの「個室管理体制」とは、空気感染対策が可能な体制とする。
本ガイドラインでの「麻疹含有ワクチン」とは、麻疹単抗原(単味)ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン(MR ワクチン)、麻疹おたふくかぜ風疹混合ワクチン(MMR ワクチン)などの、麻疹を含んだワクチンとする。
要旨(各項の詳細は、各論に記載)
※各論は国立感染症研究所ホームページ等をご参照ください。
平常時の対応:最も重要である。
・職員・実習生は、麻疹罹患歴および記録に基づく麻疹含有ワクチン接種歴を確認する
・職員・実習生は、麻疹予防の観点から、必要回数である2 回の麻疹含有ワクチン接種歴の記録を本人と医療機関の双方で保管することを原則とする
・麻疹罹患歴のある職員・実習生は、麻疹抗体価を測定し、罹患歴を検査により確認する
・必要回数である2回の予防接種歴が記録によって確認できない者、罹患歴を問わず抗体を保有していない者 (記憶違いの可能性がある)には、麻疹含有ワクチンの接種を推奨する
院内で麻疹(疑いを含む)患者発生時の対応
・患者(疑いを含む)を個室管理体制とする
・患者(疑いを含む)が職員・実習生の場合は、速やかに勤務(実習)中止とする
・院内での調査を開始し、麻疹ウイルスに曝露され、感染・発症する可能性のある患者(外来、入院)および付き添い者、職員、実習生に対して発症予防策を迅速に検討する
・麻疹と臨床診断した場合は、速やかに保健所に届出を行うと共に、保健所を通して地方衛生研究所に臨床検体(EDTA 血、咽頭ぬぐい液、尿の3 点セット:自治体毎に指定あり)を搬送する
外来での対応
・麻疹の疑いのある患者を、速やかに別室へ誘導・個室管理体制とする
・麻疹含有ワクチンの接種歴が記録で 2 回確認できた者、罹患歴有りを抗体価陽性で確認できた者が患者の対応にあたる
・患者に対応する場合は、必要な感染防御策を行う(特に麻疹抗体価や罹患歴不明の者が対応する場合)
病棟での対応
・麻疹の疑いのある患者は、個室管理が可能な病室に入院させる
・入院中の患者が麻疹疑いと診断された場合は、速やかに個室管理体制とする
・直ちに患者の行動調査を行い、接触者を把握する
・発症するリスクのある麻疹感受性者(麻疹に対する免疫を保有していないあるいは不十分なもの)に対して発症予防策を迅速に検討する
・発症する可能性のある者(麻疹の潜伏期間中と考えられる者)は、麻疹感受性者とは接触しないようにする
麻疹患者発生状況の継続的な把握と疫学調査
・院内患者発生後1か月は、麻疹患者の発生に十分注意し、上記の対応・調査を実施するとともに、患者(疑い含む)発生時は、迅速に対応する
注意事項
・麻疹含有ワクチンの緊急接種にあたっては、接種不適当者*(免疫不全者、妊婦等)に接種することがないよう、十分な配慮を行い、予診(任意接種麻疹ワクチン・麻疹風疹混合ワクチン予診票:参考資料参照)、診察の上、接種が可能と判断したものに対して、接種を実施する。
・女性の場合、接種後 2 ヶ月間は妊娠を避けるよう説明を行う。
・麻疹に対する免疫を保有しない、あるいは不十分である接触者が、麻疹患者との接触後3 日以内に麻疹含有ワクチンを接種することによって、麻疹の発症を予防できる可能性がある。しかしながら、流行時には、把握されている患者との接触機会よりも以前に既に麻疹ウイルスの曝露を受けていることを否定できない。患者との接触後迅速にワクチンが接種された場合であっても、必ずしも発症を阻止できない場合があることを被接種者に周知しておく必要がある。
・麻疹の潜伏期間が約10~12日であることから、麻疹患者と接触した場合は、接触後5日から3週間(免疫グロブリン製剤を投与した場合は4 週間まで)は発症する可能性があると考えて対応するべきである。
・麻疹に対する免疫を保有しない、あるいは不十分である接触者が、上記の期間内に発熱あるいはカタル症状を認めた場合は、外出を避け、麻疹ウイルスに感染して発症している可能性があることをあらかじめ伝えた上で速やかに医療機関を受診するように説明する。接触者が職員・実習生である場合には、周囲への感染伝播の可能性がないと判断されるまで勤務・実習を中止する。
・麻疹の発症が疑われる患者から受診の連絡を受けた場合は、来院後に当該患者が待機できるスペースを準備し、可能であれば来院時に別の入り口に誘導するなどして、できる限り他の患者との接触がないように配慮する。