「人体の不思議展」の開催中止を求める要望書
日本各地で開催されている「人体の不思議展」では、模型ではなく本物の人体に特殊な防腐処置を施した標本が展示され、営利を目的として一般に有料公開されています。
今年12月より京都市においてその展示会の開催が予定されていますが、京都府医師会としては、本展の開催には看過できない倫理的な問題を内包していることから、開催の中止を強く求めるものであります。
本展の標本について、主催者側は「生前からの意思に基づく献体によって提供された大変貴重な標本」であるとしていますが、その標本の由来には不透明な部分があり、献体者の保護という観点からも多くの問題を含んでおります。さらに、ご存知のとおり、死後の遺体にも尊厳は存在するとされており、安易な利用は厳に慎まなければなりません。ましてや、尊厳ある人の遺体に商業的価値を見出すことなど、到底、許されることではありません。
フランスでは、パリで開催中の巡回型の人体展に対し、中止を命じる判決を下されており、また、日本国内でも社会的倫理面での疑問を唱える声が出され、後援を取り下げる団体も増えております。
医学・医療の発展に献体として寄与された方々の尊い志と人間としての尊厳が完全に無視された本展の開催は容認できるものではありません。
京都府医師会は、人権と倫理の高揚を掲げる団体として、「人体の不思議展」の開催中止を強く求めます。
平成22年11月1日
社団法人 京都府医師会 会長 森 洋 一