ベースアップ評価料と医療DX推進体制整備加算の届出について

 令和6年度6月診療報酬改定で新設されたベースアップ評価と医療DX推進体制整備加算について、日医がその概要をまとめましたので、ご参照ください。

なお、ポイントを解説した動画(診療報酬オンラインセミナー)が厚労省ホームページからご覧いただけます。

 また、届出用紙は府医ホームページ「令和6年6月診療報酬改定」専用ページからダウンロードできます

(専用ページの「ユーザー名:hoken」 、「パスワード:kaitei2024」、すべて小文字半角)。

 

1.ベースアップ評価料について

◇他産業でも賃上げが続いている中、医療機関からの人材流出を防ぎ、人材を確保するためには、職員の賃上げが必要です。本来、その費用はすべて医療機関で用意しなければならないところ、今回改定で賃上げの原資となるベースアップ評価料が創設されました。そのため、ベースアップ評価料を多くの医療機関に算定いただきたいと思います。

◇ベースアップ評価料の令和8年度以降の診療報酬上での取扱いは明らかになっていませんが、介護保険施設では10年余り前から介護職員処遇改善加算等による処遇改善が図られており、その後の改定においてもその加算等については維持されていることを踏まえると、今後の診療報酬改定で単純に廃止されることは考えづらいと思います。

◇診療報酬オンラインセミナーの動画は約50分ありますが、開始7分後から35分30秒の約30分(ベースアップ評価料に関する部分)だけでも視聴いただくようお願いいたします。

◇届出の際には、賃金改善計画書の作成が必要となります。その際、留意いただきたい点は以下のとおりです。

(1)対象職員のリストアップ

◇賃金改善計画書の事前準備として、ベースアップ評価料の対象職員の範囲を確認する必要があります。賃金改善計画書には、対象職員の職種別に基本給等を計算し、記入が必要です。また、対象職員とならない「40歳未満の勤務医師等」や「専ら事務作業を行うもの」が在籍している場合についても、計画書への記載が必要です。

(2)「専ら事務作業を行うもの」の定義

◇施設基準においては「専ら事務作業(医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)を行うもの」は対象職員に含まれないとされています。

◇医師事務作業補助者や看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業は、ここでいう「事務作業」から除かれているので、「事務作業だけでなく、看護補助など患者のサポートを通じて医療に従事する業務も行う方」は、「その他医療に従事する職員」として対象職員に該当するので、ベースアップ評価料の算定分を原資として賃上げを行うことができると考えられます。

(3)ベースアップ評価料における「給与総額」、「基本給等総額」

1)定義

◇「給与総額」は、8区分あるベースアップ評価料(Ⅱ)や、165区分ある入院ベースアップ評価料のどの区分になるかを決定するために用いられます。

◇「基本給等総額」(基本給と決まって毎月支払われる手当の合計額)は、賃金改善計画書の中の概念で、算定したベースアップ評価料を充当できる対象となる賃金の類型です。業績給など、変動するものにはベースアップ評価料をあてることはできません。 

 また、ベースアップ評価料は原則、対象職員にしか分配できませんが、対象職員の基本給等を2.5%以上(令和6年度において)引き上げた場合、それを超える部分は、「専ら事務作業を行うもの」など、対象職員以外の職員の賃上げにも使うことができます。

2)法定福利費の取扱い

◇「給与総額」は「基本給等」「決まって毎月支払われる手当以外の手当て」「賞与」が含まれますが、これに加えて、健康保険料や厚生年金保険料といった「法定福利費の事業主負担分」も、ベースアップ評価料の算定上、「給与総額」に含まれます。

3)法定福利費の率

◇法定福利費が生じる方については、便宜的に一律16.5%で計上してよいとされています(厚労省疑義解釈より)。給与総額を把握していても、事業主負担分を除いた金額で把握している場合、事業主負担分の計算は大変ですが、一律16.5%として計算してよいのであれば、簡単に計算できます。

4)ベースアップ評価料による賃金改善分に含めることができるもの

◇ベースアップ評価料による賃金改善には、基本給を賃上げする方法のほか、財源管理の簡略化等の観点から、決まって毎月支払われる手当として、例えば「ベースアップ手当」といった手当を新設して、賃上げを行うことも可能です。

5)基本給等と連動する部分

◇基本給等と連動して引き上がる部分についても、ベースアップ評価料を用いた賃金改善に含めることができるとされています。反対に言えば、ベースアップ評価料算定の全額を基本給あるいは毎月決まって支払われる手当のみに当ててしまうと、基本給等に連動して上がる部分(例:健康保険料や厚生年金保険料)は、医療機関の持ち出しで上げることになります。

◇賞与のうち基本給等に連動する部分や法定福利費の事業主負担分なども考慮した上で、賃金改善の計画を立てられるとよいです。

(4)ベースアップ評価料届出後ろ倒し

◇外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を6月21日までに近畿厚生局京都事務所に提出した場合、6月1日から算定できるとされました。これまで6月1日から算定しようとする場合、6月3日までに届出が必要でしたが、届出期限が6月21日までに延びました。

◇外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)や、入院ベースアップ評価料を6月1日から算定する場合は、引き続き6月3日までの届出が必要になるので、注意が必要です。

◇診療所または一部の有床診療所においては、ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定だけでは1.2%未満の賃上げにしかならない場合、ベースアップ評価料(Ⅱ)を算定できますが、算定できるかどうかは、届出の記入を進めないと分からないため、まずは、ご自身の医療機関がベースアップ評価料(Ⅱ)の対象になるかどうか、確認いただければと思います。

◇まずは6月1日からベースアップ評価料(Ⅰ)を算定して、7月以降に改めてベースアップ評価料(Ⅱ)を算定することも選択肢になります。

2.医療DX推進体制整備加算について

◇マイナ保険証や電子処方箋などの医療DXを推進する体制を評価する「医療DX推進体制整備加算:8点(初診時)」が新設されましたので、6月1日からの算定を、是非ともご検討ください。6月1日から算定するためには、6月3日までの届出が必要です。

◇以下に示す主な施設基準要件が規定されていますが、6月の時点で満たす必要があるのは①と➁だけです。

②のポスター・配布用チラシは、厚労省ホームページからダウンロードしてください。

③~⑤は施行まで「基準を満たしているものとみなす」経過措置がありますので、6月の段階で電子処方箋など導入されていなくても届出・算定が可能です。経過措置終了後に、例えば電子処方箋が導入されていないということで、6月1日にさかのぼって減点されるようなことはありません。

①マイナ保険証での取得情報を診察室で使用できる体制(令和6年6月~)

➁マイナ保険証の利用勧奨の掲示(令和6年6月~)

③マイナ保険証利用実績が一定程度以上であること(令和6年10月~)

④電子処方箋を発行できる体制(令和7年4月~)

⑤電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制(令和7年10月~)

◇届出書(様式1の6)にある10項目のうち、6月の時点で1、2、3、9の4項目のみ「✓」を記入して届出すれば算定できます。

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